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海鳴り
第8章 海風
すっかり日が短くなった冬の空を眺め、頬にあたる風の冷たさに首をすくめながらスーパーに向かう。
クリスマスイブに一人でケーキを食べるには寂しさが募りそうだし、温かい鍋にしようかと思ってみても結局同じ事だと思いつつ、ため息をつく。
律子はクリスマスの飾り付けで賑やかな店内をぼんやりと見渡していた。
「あら、律子先生」
振り向くと『アザミ』のママ亜紀が柔らかく微笑みながら近づいて来る。
「亜紀さん。こんばんは」
「こんばんは。…冬休みなのにご実家には戻らないんですか?」
「あ…、えぇ。どうせ夏には…ここから帰らなくちゃいけないので」
母には帰って来いと散々言われたが、律子は少しでも相沢のそばにいたくて適当な理由を作って納得させた。
心配を掛けっぱなしの母のそばで、今自分がしている事への後ろめたさを感じながら過ごす事も辛かった。
「そうですか、波浜を気に入ってくださったんですね」
「…はい、大好きな町になりました」
律子の言葉に亜紀は嬉しそうに声を弾ませた。
「まあ、嬉しいわ。……ところで今夜のご予定は?」
「はぁ、特になにも」
「お一人?」
「えぇ」
クリスマスイブに一人でケーキを食べるには寂しさが募りそうだし、温かい鍋にしようかと思ってみても結局同じ事だと思いつつ、ため息をつく。
律子はクリスマスの飾り付けで賑やかな店内をぼんやりと見渡していた。
「あら、律子先生」
振り向くと『アザミ』のママ亜紀が柔らかく微笑みながら近づいて来る。
「亜紀さん。こんばんは」
「こんばんは。…冬休みなのにご実家には戻らないんですか?」
「あ…、えぇ。どうせ夏には…ここから帰らなくちゃいけないので」
母には帰って来いと散々言われたが、律子は少しでも相沢のそばにいたくて適当な理由を作って納得させた。
心配を掛けっぱなしの母のそばで、今自分がしている事への後ろめたさを感じながら過ごす事も辛かった。
「そうですか、波浜を気に入ってくださったんですね」
「…はい、大好きな町になりました」
律子の言葉に亜紀は嬉しそうに声を弾ませた。
「まあ、嬉しいわ。……ところで今夜のご予定は?」
「はぁ、特になにも」
「お一人?」
「えぇ」