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海鳴り
第9章 夕凪
「律子…、明日はシケで船は出せねえけど…あんたは学校が…」


律子を気遣う相沢の言葉を無視してその手を掴み、左の乳房に押し付けた。


「平気です、若いから」


律子がクスッと笑うと、「俺だってまだまだ若えし元気だ」と顔をほころばせ律子を横にして抱え上げた。


「和男さんはもうオジサン」

「黙れ」


相沢は律子を抱えたまま部屋に入り、グルグルと勢いよく回る。


「キャー、や、やめて…やめて…」


律子が怖がって肩にしがみついて叫ぶと、相沢が声を上げて笑った。


「…ま、待って、待って」

「なんだ降参か」


律子をベッドに寝かせながら顔を覗き込む。


「笑った」

「ん?」

「笑ったわ」

「……」


律子は相沢の頬を両手でグニグニと動かした、


「もっと笑って」

「やだね」

「笑いなさい」

「男はヘラヘラ笑わねえもんだ」

「和男クン、先生の言う事を聞きなさいっ」

「…っ…」

「ぷっ」

「あははは……」
「あははは……」


二人は抱き合って笑った。




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