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海鳴り
第2章 過去へ──出会い
「慣れるまでは大変でしょうけど、この町の人達はみんな温かいですよ。
わからない事や困った事は遠慮なく、私や他の教員に相談して下さい」

「はい、よろしくお願いします」


律子は白髪混じりの校長の優しい表情にほっとしながらも、相沢武の父親の威圧感を思い出し、すぐに気が重くなった。



──────……



校舎を出て校門に向かいながら、律子はゴォーーッと辺りに響き渡る重低音に耳をそばだてた。


旅客機が飛んでいるのだろうか


まだ明るい筈の空に、いつの間にか重そうな黒雲がのさばり、風は強くなっていた。

校門を出て自宅と言われた場所に目をやると、その近くで石ころを蹴って遊んでいる子供が見えた。


「あ、来た…」


男の子はそう言って律子に駆け寄って来る。


「ねぇ、先生なの?」


キラキラと好奇心いっぱいの瞳が問いかける。


「そうよ、よろしくお願いします」


律子のどこかにスイッチが入った。


「もしかして相沢武くん?」

「うん、僕一年生!」


ぴょんぴょんと跳ねながら得意気な顔で律子にまとわりついてくる。


「荷物持つよ」

「そう? 重いわよ」

「大丈夫だよ、僕、男だから」





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