この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
海鳴り
第11章 引き潮
バスはカーブの手前で止まっていた。



和男さん…

私、行きます



「う、運転手さん、出して下さい」

「先生、大丈夫ですか」

「だ、大丈夫…大丈夫です…、あの…」

「ん?」

「誰かに聞かれたら…、少し泣いてたけど、すぐに泣き止んで笑ってたって、言って下さい」

「あ、わ、わかったわかった。…みんな心配するからな、うんうん」


バスが動き出した。



大好きな人…

私の大好きな人



「うぅっ…、さ、さよ…、さようならっ…うぐっ…さようならっ…さようならさようなら…みんなさようなら…和男さん…和男さん……和男さん…うぅっ、いや゛、ア゙ァーー」



律子は窓ガラスを叩いて泣いた。

髪を振り乱し、前の席に頭を擦り付け、カバンに突っ伏して泣いた。

武と一緒にそのカバンを持ち上げた事や、海鳴りを知った日の事、直也との事、アザミ、スーパー、学校、漁港、初めての夜、大漁の日の相沢の姿…


全ての人を、思い出を想って狂ったように泣きわめいた。


「和男さんっ…和男さん…和男さん…和男さん…うぅっうぅっ…」


この町は相沢そのものだった。


「わかった、何も聞かねえ、何も言わねえ、わかった泣いちまえ、ここには誰もいねぇ…大丈夫だ大丈夫だ…」


バスはゆっくりとカーブを曲がり、海は見えなくなっていった。


………



波浜の町から、律子がいなくなった。






/221ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ