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海鳴り
第11章 引き潮
バスはカーブの手前で止まっていた。
和男さん…
私、行きます
「う、運転手さん、出して下さい」
「先生、大丈夫ですか」
「だ、大丈夫…大丈夫です…、あの…」
「ん?」
「誰かに聞かれたら…、少し泣いてたけど、すぐに泣き止んで笑ってたって、言って下さい」
「あ、わ、わかったわかった。…みんな心配するからな、うんうん」
バスが動き出した。
大好きな人…
私の大好きな人
「うぅっ…、さ、さよ…、さようならっ…うぐっ…さようならっ…さようならさようなら…みんなさようなら…和男さん…和男さん……和男さん…うぅっ、いや゛、ア゙ァーー」
律子は窓ガラスを叩いて泣いた。
髪を振り乱し、前の席に頭を擦り付け、カバンに突っ伏して泣いた。
武と一緒にそのカバンを持ち上げた事や、海鳴りを知った日の事、直也との事、アザミ、スーパー、学校、漁港、初めての夜、大漁の日の相沢の姿…
全ての人を、思い出を想って狂ったように泣きわめいた。
「和男さんっ…和男さん…和男さん…和男さん…うぅっうぅっ…」
この町は相沢そのものだった。
「わかった、何も聞かねえ、何も言わねえ、わかった泣いちまえ、ここには誰もいねぇ…大丈夫だ大丈夫だ…」
バスはゆっくりとカーブを曲がり、海は見えなくなっていった。
………
波浜の町から、律子がいなくなった。
和男さん…
私、行きます
「う、運転手さん、出して下さい」
「先生、大丈夫ですか」
「だ、大丈夫…大丈夫です…、あの…」
「ん?」
「誰かに聞かれたら…、少し泣いてたけど、すぐに泣き止んで笑ってたって、言って下さい」
「あ、わ、わかったわかった。…みんな心配するからな、うんうん」
バスが動き出した。
大好きな人…
私の大好きな人
「うぅっ…、さ、さよ…、さようならっ…うぐっ…さようならっ…さようならさようなら…みんなさようなら…和男さん…和男さん……和男さん…うぅっ、いや゛、ア゙ァーー」
律子は窓ガラスを叩いて泣いた。
髪を振り乱し、前の席に頭を擦り付け、カバンに突っ伏して泣いた。
武と一緒にそのカバンを持ち上げた事や、海鳴りを知った日の事、直也との事、アザミ、スーパー、学校、漁港、初めての夜、大漁の日の相沢の姿…
全ての人を、思い出を想って狂ったように泣きわめいた。
「和男さんっ…和男さん…和男さん…和男さん…うぅっうぅっ…」
この町は相沢そのものだった。
「わかった、何も聞かねえ、何も言わねえ、わかった泣いちまえ、ここには誰もいねぇ…大丈夫だ大丈夫だ…」
バスはゆっくりとカーブを曲がり、海は見えなくなっていった。
………
波浜の町から、律子がいなくなった。