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海鳴り
第3章 ぬくもり
窓ガラスを叩く雨も、高く叫び続ける風の存在も、今の律子のには届かなかった。律子は相沢の息遣いと触れ合う肌の熱さだけに怯えていた。


「…ウ……ン…ッ…──」


目眩をおこしそうな律子から唇を離し、相沢はゆっくりと律子を床に横たえた。


「…っ…」


慌てて起き上がろうとする律子の躰は相沢の重みで動かせず、両手首は耳の横で押さえつけられていた。

鋭く熱い目が律子を襲う。


「や、やめて…」

「………」


薄暗い中、怯えた目で小さく首を振る律子を、相沢は荒い息を静めながら見つめていた。


「怖いのか」

「………」


声が出ない。


「どっちなんだ」


見つめられているだけで躰の奧が熱い。

胸の鼓動は痛い程強く鳴り響き、律子の心を震わせた。


見つめないで

なにもしないで…

苦しい…


「──…っ…」


相沢は律子の目を見据えたまま、ブラウスの上から左の乳房を強く握りしめた。


「──…クッ…」

「怖いか」


律子は涙が滲んでいる事にも気付かず、目を閉じて何度も頷いた。

熱い雫が耳の方へ落ちていった。



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