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海鳴り
第4章 さざ波
午前中に電話が使えるようになり、律子は心配しているであろう母親に連絡を取った。

昨日公衆電話からでも連絡が欲しかったと言う母に、外に出られない程の悪天候だったとごまかした。

けっして嘘ではなかったが、夕べの事は後ろめたく、悪天候でなかったとしても連絡は今日になっただろう。


「素敵な町なの、気に入っちゃった」


明るい声で母を安心させ、電話を切ってから深いため息をついた。





『しっかりしてください先生』

『うちの子は受験を控えているんです』

『もっと宿題を出してください』

『塾の宿題が大変なんです、宿題を出さないでください』

『遅れている子に時間を掛け過ぎじゃないですか』

『いじめているのはうちの子じゃありません』

『先生ご自身の力不足なんじゃないですか?』





夢を叶えて教師になったというのに、相手は子供達ではなく親達だった。


負けず嫌いの律子は他の教師達に弱音を吐く事が出来ず、相談してみようと決意した時にはすでに体調を崩してしまっていた。


それでも子供達が好きだった。





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