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海鳴り
第4章 さざ波
授業中に自分を見つめるつぶらな瞳、理解できた時の嬉しそうな表情。

世間知らずな新米教師を一途に慕ってくれる子供達に、精一杯答えようとしてきた充実の日々。

退職後、療養しながら自分自身の行く先を医師や両親と何度も話し合う中、母親は違う道を強くすすめたが律子は教師を辞めなかった。

そして他県ではあったが、この小さな町を再出発の場所に決めたのだった。


一人分の引っ越し荷物を整理しながら律子は、ほかの事に気をとられている暇はない、早く頭を切り替えよう、と忙しく動き回っていた。

昨夜から一転して空は嘘のように晴れわたり、陽射しはまだ夏の暑さを緩めてはいないものの、雲は高い場所に薄く流れて秋の気配を知らせていた。

ようやく我が家らしい形が整ってきたと感じながら、開け放していた玄関のドアを閉めようとした時、


「律子先生こんにちは!」


武がやって来た。


「武くん…、こんにちは」

「僕ねぇ、父ちゃんの手伝いに来たんだよ」


すぐに相沢が姿を見せた。


ホントに来た…


心臓が勝手に暴れだした。




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