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海鳴り
第6章 海鳴り
「翼くん、今日遊べる?」
帰りの会の後、一番最後に教室を出ながら武が翼に話し掛けた。
「今日はね、みんなで親戚のおばさんちにお泊まりに行くの」
「そっかー、じゃあまた今度ね」
「うん、ごめんね」
「律子先生さよならー」
「また来週~」
「さようなら、少し寒くなってきたから風邪ひかないようにね」
「はーい」
「バイバーイ」
教卓を片付けながら手を振る子供達に応え、律子はふと窓の外に目を向けた。
雲が厚くなっていた。
教室のカーテンを閉めながら、風に流されてゆっくりと広がっていく雨雲を眺める。
「今夜は荒れそう…」
律子は天気予報を思い出しため息をついた。
子供達のいない教室はやけに冷たく感じる。
ドアを締め職員室に向かいながら「懐中電灯…」とつぶやき、律子は暗闇で相沢に唇を奪われたあの日を思い出した。
──怖いのか
耳に残る響きはいつでも胸を締め付けた。
乳房に残る痛みは鋭い視線と共に律子を熱くした。
忘れたい…
──あんたに惚れてる
一時の気まぐれだろうか
もう、言った事さえ忘れているのだろうか…
忘れたい
忘れられない…
帰りの会の後、一番最後に教室を出ながら武が翼に話し掛けた。
「今日はね、みんなで親戚のおばさんちにお泊まりに行くの」
「そっかー、じゃあまた今度ね」
「うん、ごめんね」
「律子先生さよならー」
「また来週~」
「さようなら、少し寒くなってきたから風邪ひかないようにね」
「はーい」
「バイバーイ」
教卓を片付けながら手を振る子供達に応え、律子はふと窓の外に目を向けた。
雲が厚くなっていた。
教室のカーテンを閉めながら、風に流されてゆっくりと広がっていく雨雲を眺める。
「今夜は荒れそう…」
律子は天気予報を思い出しため息をついた。
子供達のいない教室はやけに冷たく感じる。
ドアを締め職員室に向かいながら「懐中電灯…」とつぶやき、律子は暗闇で相沢に唇を奪われたあの日を思い出した。
──怖いのか
耳に残る響きはいつでも胸を締め付けた。
乳房に残る痛みは鋭い視線と共に律子を熱くした。
忘れたい…
──あんたに惚れてる
一時の気まぐれだろうか
もう、言った事さえ忘れているのだろうか…
忘れたい
忘れられない…