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海鳴り
第6章 海鳴り
職員室で日誌を書き終え、月曜日の予定を確認しながら律子は同僚との雑談を楽しんだ。


「律子先生、土曜の夜は何処かへお出掛け?」


隣の席の野口が意味深な顔で話し掛ける。


「あはは…、野口先生はどうなさるんですか?」

「いつもと変わらず子供と旦那様のおもり」

「ふふ、私もいつもと変わらずですよ、お天気も崩れそうだし早く寝てしまいます、停電しないうちに」

「そうよねぇ、花の独身には、ここは何もない陸の孤島だものねぇ」

「ふふ…そういう事です。…それではお先に失礼します」


律子はデスクを片付け立ち上がった。


「お疲れさま、退屈でよい休日を」

「あはは…、野口先生も。…では」


律子は笑顔で会釈をして職員室を後にした。

眠れない夜が続いていても、一人の休日より学校で子供達といた方が気が紛れた。

靴を履き替え外に出ると、まだ明るい筈の空が重そうな雲に覆われ、辺りは夕暮れのように薄暗くなっていた。



ゴォーーーー……



海鳴りだ…



顔に当たる風は冷たく、律子はコートの襟を立てて首をすくめた。



この音嫌い…



逃げるように足早に歩き出すと、律子を嘲笑うかのようにドォーンドォーン…と地の底から腹に響くうなり声が轟いた。



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