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桜 ~あなたに見られたくて~
第13章 ウェディング
秋が深まりつつあった。
私は飯塚さんと腕を組んで
チャペルの門をくぐった。
私たちの姿を見つけると
「陽菜~っ!」と
会社の同僚である祥子さんが
腕が千切れんばかりに振って出迎えてくれた。
「遅かったじゃない、みんなお待ちかねよ」
さあ、早く式場に入ってくれないと
結婚式が始まらないじゃない。
そう言って祥子は私の手を引いて
チャペルに向かうように急かす。
「だめだめ!やめてよ
安定期に入ったといっても
走ったり出来ないんだから」
「ごめんな、祥子さん、
なるべく急いで式場に向かうから」
飯塚さんは、そっと私の肩を抱いて
大きなお腹の私を守ってくれる。
「そっか、ごめんなさいね
私、妊娠したことないからよくわかんなくて」
祥子さんはそう言って
歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれた。
「それにしても陽菜と恭平がデキちゃったなんて…
よく考えたら結婚したら
私と陽菜は義理の従兄弟になるのね」
「まあ…そうなるわね」
「あら?浮かない顔ね
私と従兄弟になるのが不満なの?
まだ入籍を迷っているの?」
「ううん、そうじゃなくてさあ」
原因はアレよ
私はチャペルの階段の上で
参列者を出迎えるウェディングドレス姿の
母の陽子を指差してため息をついた。