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桜 ~あなたに見られたくて~
第9章 母 陽子

ピンポン、ピンポーン!!

インターホンのチャイムがけたたましく鳴る。

母だ…

私は憂鬱な気分でドアを開けた。

「陽菜、久しぶり、元気にしてた?」

大きなサングラスに大きなつばの帽子
おまけにしっかりとメイクをして
目鼻立ちが整った顔はどこの女優かと見間違う。

大きいのはサングラスや帽子だけでなく、
引きずってきたトランクまで大きい。

「お母さん!何よその荷物!」

そのトランクの大きさからして
それが一泊や二泊ではないと容易にわかる。

「あ~、これ?
しばらくご厄介になろうかと思ってね」

「しばらくって…どれぐらい泊まるつもりよ」

「まあまあ…立ち話もなんだし
中に入るわよ」

づかづかと遠慮なしに部屋に上がり込んできた。

グルリと部屋を見渡して
「ほんと、男っ気のない部屋ね」と言って
母はため息を付いた。

「てっきり男と
同棲でもしているのかと思ってたのに」

以前にメールで
光俊と付き合っていることをほのめかしたから
別れたことも知らずに
交際が順調だと思っているのだろう。

「付き合っている男に会わせて頂戴よ
母としてちゃんと挨拶しておきたいわ」

「えっと…彼とは別れたのよ…」

「あら、勿体ない!
早くいい人を見つけて嫁にいかないと
行き遅れるわよ」

「ほっといてよ、私はまだまだ結婚する気なんて
全然これっぽっちも考えていないわ」

まったく…いつになったら孫の顔を見れるのかしら

そんなことをぶつぶつ言いながら
母は荷ほどきを始めた。

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