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インセスト・タブー
第2章 縺れていく血の糸
あたしがどこかの家に仕えようとしないのには、自分の姿の他にも理由があった。

見慣れた扉を前に、ため息をつく。邸の玄関だ。中へ入ると、見知らぬ女性ものの帽子があった。

…またか。

奥へ進み、部屋を覗き込む。テーブルを挟み、ティーカップを手に談笑する二人の女性が見えた。

「…エリザーベト」
あたしがそう呼ぶと、二人がこちらを見た。

「ああ、エオレ。こちら、アスゴット夫人よ」
エリザーベトが向かいに座る女性を示す。アスゴット夫人は優雅に会釈し、あたしも会釈を返した。

と、夫人がカップを置き、立ち上がる。

「では、わたくしはそろそろ失礼しますわね」

「あら、もう?残念ね」
エリザーベトもカップを置いた。と、今日は楽しかったですわ、と夫人はエリザーベトに意味深に微笑む。

「またお茶しましょうね」
エリザーベトも笑みを返すと、夫人は背を向け、連れてきていたらしい使用人の女性と共に帰っていった。
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