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インセスト・タブー
第5章 おのが癒しを求めて他が苦しみを生む
オパリンスキ邸に来るようになって数日経ったある日。そこで思いがけず、見知った人物と顔を合わせる。
「ゴーシュ?」
なんと、ゴーシュが邸の一室から出てきたのだ。あたしの知る限り、ポズナン公との繋がりはゴーシュにはないはずだが。
「ああ…エオレ様。こんにちは」
相変わらずの早口だ。
「…こんにちは。ゴーシュ、どうしてここに?」
「兄さん――ああ、“エオレ様ではない方の”兄さんの仲介で、わたくしも先日からお仕えしているのですよ」
半笑いのゴーシュに、ああ、そう言えばゴーシュも同じ日にポズナン公に呼ばれていたっけ、と思い出す。
…あの時からこちらに奉公しているのね。
「ああ、そうなのね。あなたのお兄さんとは暫く会っていないけれど…息災かしら」
“ゴーシュの兄”という言い方をするのは、彼はゴーシュの兄ではあっても、あたしの兄ではないからだ。
この辺の事情は少々複雑なのだが…実はエリザーベトの子であるゴーシュは、その事実は隠され、エリザーベトの実家・ヴァーサ家に引き取られていた。
同じ頃ヴァーサ家には赤子がおり、それがゴーシュの言う“あたしじゃない方の兄”だった。エリザーベトの年の離れた弟、あたしには叔父に当たる。二人はともに騎士見習いとして育てられ、すぐに奉公に出されたため、一緒に過ごした期間は短い。
「ゴーシュ?」
なんと、ゴーシュが邸の一室から出てきたのだ。あたしの知る限り、ポズナン公との繋がりはゴーシュにはないはずだが。
「ああ…エオレ様。こんにちは」
相変わらずの早口だ。
「…こんにちは。ゴーシュ、どうしてここに?」
「兄さん――ああ、“エオレ様ではない方の”兄さんの仲介で、わたくしも先日からお仕えしているのですよ」
半笑いのゴーシュに、ああ、そう言えばゴーシュも同じ日にポズナン公に呼ばれていたっけ、と思い出す。
…あの時からこちらに奉公しているのね。
「ああ、そうなのね。あなたのお兄さんとは暫く会っていないけれど…息災かしら」
“ゴーシュの兄”という言い方をするのは、彼はゴーシュの兄ではあっても、あたしの兄ではないからだ。
この辺の事情は少々複雑なのだが…実はエリザーベトの子であるゴーシュは、その事実は隠され、エリザーベトの実家・ヴァーサ家に引き取られていた。
同じ頃ヴァーサ家には赤子がおり、それがゴーシュの言う“あたしじゃない方の兄”だった。エリザーベトの年の離れた弟、あたしには叔父に当たる。二人はともに騎士見習いとして育てられ、すぐに奉公に出されたため、一緒に過ごした期間は短い。