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インセスト・タブー
第5章 おのが癒しを求めて他が苦しみを生む
「エ……」

「ご苦労様」
あたしは目を合わせないようにしてそう言い、少女の横を通りすぎようとした。だが、少女は負けじと、勢いよく振り返る。

「エオレ様。人は弱い生き物ですから、逃げてしまうこともあるでしょう。でも、逃げ続けることはできません。いずれは立ち向かわなければならないのです」
少女は先ほどよりもはっきりとした口調で、あたしの背中に言う。

…この子、やっぱり苦手だわ。

少女の必死の言葉もあたしの心には届かない。あたしは顔をしかめ、無視した。

「そのための剣を、エオレ様はもうお持ちのはずです!」
少女は叫んだ。

それでもあたしは目もくれず、あっという間に少女の視界から姿を消した。邸の中は、なんだかやけに静かだった。
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