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混沌の館
第10章 美咲の夫
 車に乗り込むと、手がガクガクと震えて暫くは運転が出来なかった。



 美咲には悪いことをしたが、ああするより他がなかった。

 しかし、全て自分に責任があるかというと、そうは思えなかった。美咲の病気や自傷行為には同情するが、何事にも『程』というものがある。それを逸脱したのは美咲だ。


 私は巻き込まれただけだ。自分に何度も言い聞かせるしか、落ち着きを取り戻す術はなかった。



 車を走らせながら、もし本当に訴訟になったらどうするか?恐怖に苛まれた。その恐怖は、その後も続いたが、結局、何かが起きるという事はなかった。




 美咲とはその後、連絡を完全に断ったが、たまに掲示板で募集をかけているところを見ると、まだまだ不倫願望は抜けていないようだった。



 結局、あの夫婦は、ああやって付かず離れずの状態で歳を重ねていくのだろう。

 何故あの旦那が美咲を抱かないのか分からないが、案外、あの男も不倫しているのかも知れない。





 しかし、この出来事は、私のサイトでの活動を消極的にさせるには十分だった。





 秋も深まり、その年の終りもそろそろ見えてきた時期の事だった。





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