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混沌の館
第5章 潮を吹く熟女
「おお~」
思わず声が漏れそうになった。
暫く私は何が起きたのか分からなかった。
ケイコの顔を見た途端、幽体離脱した様に意識が途切れてしまったみたいだ。
しわの中に埋もれた細い目、ねずみ男の様な出っ歯。
暗闇の中でも分かるどす黒い肌。
助手席の窓から覗きこんだ笑顔は、『羅生門』の追い剥ぎ老女を彷彿とさせる不気味なものだった。
私の眼は、シャチに追われて逃げ惑うイワシの群れの様に乱れ泳いでいた事だろう。
「こ、こんばんは、初めまして」
私は、急発進して逃げだしたい衝動を抑え、ひきつった笑顔で辛うじて挨拶をした。
「おまた~せ~、付き合っ~てく~れて~ありが~とう~」
古木戸の錆びついたかんぬきを無理にこじ開けるような、しゃがれた声で老婆も挨拶する。
私は、心臓が止まりそうになるのを、胸をドンドンと叩いて正気を保った。
そうだ、別に何処に行くとか決めていない。ちょっとその辺のラーメン屋にでも行って直ぐに帰ってくればいい。
私は、自分に「大丈夫だ」「大丈夫だ」と言い聞かせて平静を保った。
意識を失う寸前の私を余所に、老女はドアを開け、車に乗り込んできた。
思わず声が漏れそうになった。
暫く私は何が起きたのか分からなかった。
ケイコの顔を見た途端、幽体離脱した様に意識が途切れてしまったみたいだ。
しわの中に埋もれた細い目、ねずみ男の様な出っ歯。
暗闇の中でも分かるどす黒い肌。
助手席の窓から覗きこんだ笑顔は、『羅生門』の追い剥ぎ老女を彷彿とさせる不気味なものだった。
私の眼は、シャチに追われて逃げ惑うイワシの群れの様に乱れ泳いでいた事だろう。
「こ、こんばんは、初めまして」
私は、急発進して逃げだしたい衝動を抑え、ひきつった笑顔で辛うじて挨拶をした。
「おまた~せ~、付き合っ~てく~れて~ありが~とう~」
古木戸の錆びついたかんぬきを無理にこじ開けるような、しゃがれた声で老婆も挨拶する。
私は、心臓が止まりそうになるのを、胸をドンドンと叩いて正気を保った。
そうだ、別に何処に行くとか決めていない。ちょっとその辺のラーメン屋にでも行って直ぐに帰ってくればいい。
私は、自分に「大丈夫だ」「大丈夫だ」と言い聞かせて平静を保った。
意識を失う寸前の私を余所に、老女はドアを開け、車に乗り込んできた。