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「ここにはよく来るんですか?」
第1章 room 01 愛逢村
「やっぱダメかぁ……」
頭の中でそう呟き、スマホを机の上に置く。画面に表示された22:17の文字を見て大きく、そして深くため息を吐く
「おつかれ〜」
突然声を掛けられると、声の主は一本の缶コーヒーを手渡してくれた
「いつもすいません、川田主任。今日も遅くまでお疲れ様でした」
「小沢くんこそ、朝までご苦労さんやねぇ。やっと春らしくなってきたけど、夜はまだ冷えるし、風邪ひかんようにね」
そう言って、川田主任は「関係者専用出入口」から出ていった
「川田さん、疲れた顔してたなぁ……」
大手百貨店の裏口にいれば、店内で明るく振る舞う従業員の素の顔をたくさん見る
川田主任は紳士服売り場の責任者で、後数日で4月を迎える今、新社会人に向けたリクルートスーツコーナーの対応に追われているようだ
この時期はどこの売り場も忙しい。この百貨店で一番呑気なのは、裏口で資材搬入を主に扱う俺なのかもしれない
忙しい時もあるが、相手は基本的に業者で、一般の買い物客を相手にする事は皆無と言っていい。その為、割と気楽な感覚で仕事が出来ている。給料は極一般平均並で決して多くはないが、夜勤もあるせいで、その調整のため出勤日数が少なく、自分の時間が多く取れるのがありがたい
川田主任が退社し、もう店に従業員は誰も残っていない。ここから俺の仕事は警備員に変わる。とは言っても、店内を巡回する事もなく、この守衛室で朝まで監視カメラと睨めっこするだけだ
「……もいっちょやってみるか……」
川田主任がくれた缶コーヒーを飲み、机の上のスマホを手に取る
やたらとピンク色の多い画面の一番上には『愛逢村』と書かれている。俗に言う出会い系サイトだ
掲示板式のこのサイト、1カ月ほど前に偶然見つけて、無料で使えるようだったのでちょこちょこ試しに書き込んでいる
自分で好きなメッセージを書いて掲示板を作り、そこに書き込んでくれた人とマンツーマンでメッセージを交換し、チャットができる仕組みになっているのだが、今まで誰も書き込んでくれる女性はおらず、書き込みがあったとしても、冷やかしや悪戯、男がふざけてからかいに来りするだけだった
頭の中でそう呟き、スマホを机の上に置く。画面に表示された22:17の文字を見て大きく、そして深くため息を吐く
「おつかれ〜」
突然声を掛けられると、声の主は一本の缶コーヒーを手渡してくれた
「いつもすいません、川田主任。今日も遅くまでお疲れ様でした」
「小沢くんこそ、朝までご苦労さんやねぇ。やっと春らしくなってきたけど、夜はまだ冷えるし、風邪ひかんようにね」
そう言って、川田主任は「関係者専用出入口」から出ていった
「川田さん、疲れた顔してたなぁ……」
大手百貨店の裏口にいれば、店内で明るく振る舞う従業員の素の顔をたくさん見る
川田主任は紳士服売り場の責任者で、後数日で4月を迎える今、新社会人に向けたリクルートスーツコーナーの対応に追われているようだ
この時期はどこの売り場も忙しい。この百貨店で一番呑気なのは、裏口で資材搬入を主に扱う俺なのかもしれない
忙しい時もあるが、相手は基本的に業者で、一般の買い物客を相手にする事は皆無と言っていい。その為、割と気楽な感覚で仕事が出来ている。給料は極一般平均並で決して多くはないが、夜勤もあるせいで、その調整のため出勤日数が少なく、自分の時間が多く取れるのがありがたい
川田主任が退社し、もう店に従業員は誰も残っていない。ここから俺の仕事は警備員に変わる。とは言っても、店内を巡回する事もなく、この守衛室で朝まで監視カメラと睨めっこするだけだ
「……もいっちょやってみるか……」
川田主任がくれた缶コーヒーを飲み、机の上のスマホを手に取る
やたらとピンク色の多い画面の一番上には『愛逢村』と書かれている。俗に言う出会い系サイトだ
掲示板式のこのサイト、1カ月ほど前に偶然見つけて、無料で使えるようだったのでちょこちょこ試しに書き込んでいる
自分で好きなメッセージを書いて掲示板を作り、そこに書き込んでくれた人とマンツーマンでメッセージを交換し、チャットができる仕組みになっているのだが、今まで誰も書き込んでくれる女性はおらず、書き込みがあったとしても、冷やかしや悪戯、男がふざけてからかいに来りするだけだった