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「ここにはよく来るんですか?」
第6章 room 04 智恵(前編)
「お昼、食べてきた?」
「ううん、何か食べに行こうよ」
俺達は移動し、昼から開いている居酒屋の暖簾をくぐった。大阪の街にはこんな店がいくらでもある。ひとまず軽く食事を取り、話をする事にした
俺はビール、智恵はレモンサワーで乾杯する。おつまみは枝豆と刺身盛だ
「散々SNSで話してきたから、なんか初めましての感じがしないね」
「ははは、俺もそう思うよ」
この2週間、毎日話をしていた為、お互い仲のいい友達といった感覚になっていた。ただし、出会い系サイトで知り合った者同士、通常の異性の友達よりも、深いところだけをよく知っている関係だと言える
「彼氏に隠れていつもこんな事してるんや?」
「まぁ、ここ(大阪)にいないからね」
悪びれた様子もなく、にんまりと笑いながらそう答える智恵
「ここ(大阪)に居ても絶対浮気するやろ?」
俺も意地悪っぽく笑ってそう言ってやった
智恵は飲みかけたレモンサワーを危うく吹き出しそうになりながら笑った
「……うん、してる〜」
これまた悪い顔でそう返すと、智恵は刺身を一切れ箸で摘み、口へ運んだ
不思議と彼女と話していても、『浮気性の悪い女』という印象は受けない。実際にやっている事は完全に彼氏を裏切った行為なのだが、話し方や雰囲気がそう思わせるのだろうか
「タカくんの方はあらかじめOK貰ってるんやし、強いもんよね」
「まぁね」
俺は1つだけ嘘をついていた
智恵には、俺は彼女持ちという事で通している。それは、智恵が基本的に既婚者か、彼女がいる男としか会わないからだ
『彼女が俺の性欲についていけなくて、外でセフレ作っていい…と、言われている』というのが俺のついた嘘の設定だ
でも、過去によく似た事を言われた経験が実際にあった。その時はセフレを作るなんて考えてもいなかったし、無理だと思っていた
よって、今はその時のとこを思い出しながら『今彼女がいる』という設定にしている