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ネイル
第3章 逃亡
翌る日、俺は出勤して上司に事情を話そうと会社に向かった。
今日は修二や隆一たちとも久しぶりに会う約束になってる。
会社に着いたら、一目散に来たのは事務の女性の亜紀ちゃんだった。
ね、ね、ね、ちょっとちょっとちょっと!
こっち来て!
な、な、何?どうしたの?
何かあったわけ?
誰なのよ!あの美人は?
まさか、拓也くんの彼女さんじゃないわね。
どう考えても。
何だよ。その奥歯に物が詰まったような言い方は。
お姉さん?
拓也くんってお姉さんがいたっけ?
てか、そのマニキュア何?
あ、彼女さん?
会社では騒ぎになっていた。
俺がオフィスに入るともう見慣れてしまった後ろ姿がそこにはあった。
主人がお世話になっております。
いつも気にかけていただいて光栄です。
…と女性が菓子折りを社員に配って回っている。
か、か、香織?香織!
あ、拓也さん。おはよう。
今ね、皆さんに挨拶して回っていたの。
何してんだよ。会社にきて。
その前に何で俺の会社知ってるんだよ。
帰れよ!今すぐに!
…香織は淋しい顔をして顔を両手で覆った。
ううう…皆さんに挨拶しにきただけなのに… ひどい…
ひどい!私をさんざんオモチャにしたくせに!
私を弄んで毎日のように私の身体を貪るように使い込んだくせに!
拓也は香織を床に突き飛ばしていた。
香織はしゃがみ込んで泣き崩れている。
そのうち、起き上がると飛び出していった。
お、おい、拓也。追わなくていいのかよ。
ああ、いいよ。スッキリしたよ。少しだけ…な。
…ああ。香織に酷い事を言ってしまった。
許してくれないだろう。
どんな顔して会えばいいんだろうか。
香織はただ純粋に会社に挨拶にきてくれただけなのに。
なんて出来た女性だろう。今どき見かけないくらいの謙虚さかある。
それなのに、俺としたことが。
隆一たちと会って気晴らしでもするか。
会社が終わり、俺はいつもの居酒屋に向かっていた。
居酒屋に入ると隆一たちがいた。が
女性の後ろ姿が見える。
ま、ま、まさか。嘘だろ?香織?
お〜い拓也!こっちこっち!
ああ…久しぶり…
拓也は怯えながらゆっくりと女性の背後に忍びよる。
隆一。誰?この女性。
女性は香織ではなかった。
ひとまずひと安心したが、香織でも良かった。
今朝のことを謝りたかったから。
おまえ…会うの久しぶりじゃないのか?彼女と。
え?誰?
久しぶりね。拓也くん。
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