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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第10章 桜いかだ 其の参
「止さねえか、追えば、女は逃げる。頼むから、おれんさんのことはもうそっとしておいてやってくんな」
 弥助の説得も、逆上した若旦那の耳には届かない。そのうち、藤次郎は、おれんの腕を放し、弥助と取っ組み合いになった。互いが上になり下になりの繰り返しで、弥助の拳が藤次郎の右頬に当たれば、次には、藤次郎の平手が弥助の左頬で炸裂する。
 そんなことをどれほど続けただろう、恐らく時間にすれば、たいした刻ではなかったかもしれない。
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