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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第11章 四つめの恋花 山茶花~さざんか~ 其の壱
千汐は憮然とした顔で、男を見つめた。
「人って言ってもさ、一体どんな人なの? それを聞かなきゃ、応えようがないじゃない」
〝ああ〟と、男は素直に頷いた。
「名はお督というんだ。そうだな、背はすらりと高くて、少し、あなたに似ている。色が抜けるように白くて―」
言いかける男の言葉を、千汐は唐突に遮る。
「それで、そのお督さんがどうしたのさ」
「ここで待ち合わせをしていたんです」