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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~
第12章 山茶花~さざんか~ 其の弐
時折、気紛れな春の風が枝を揺らし、はらはらと散り零れた花びらが水面に落ちて、漂い流れてゆく様は、夢のようにきれいだ。春になると、千汐は和泉橋のたもとに来て、一人、花を眺める。
千汐の瞳には、今、爛漫と花を咲かせたあの枝垂れ桜がありありと甦っていた。
男がそっと背後から千汐を抱きしめる。
男の身体が静かに離れた。
それをどこかで淋しいと思う自分がいることに戸惑いながら、なおも雪を見ていた。