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バカな男に私は夢中
第10章 欲望
コーヒーを淹れにいくと、斎藤が後ろからついてくる。

「さっきから何黙ってるの?」

笑って尋ねると、言いづらそうに私を見た。

「百合ちゃんてほんまに金持ちなんやなって。身分違いの恋やわ..ロミジュリやわ..」

「バカね。ロミジュリはどっちも金持ちだし。それに私はお金ないわよ。親がちょっと人より持ってるだけ。」

私が目を逸らしていうと斎藤が微笑む。

「百合ちゃん久々やなぁ..」

そういって近づいてきた。

私も動きを止めてそちらを見る。

「百合ちゃ..」

「あ、マキちゃん、そこのクッキー持っていっていいよ。」

私が斎藤の後ろでニヤニヤしているマキに言うと、慌てたように逃げていった。

「あ..クッキー..」

私が呟くと、腕を伸ばしたまま固まっている斎藤を不審に思って見あげた。

「何してんの?」

「....石像ごっこ。」

そう答えると斎藤は肩を落としてキッチンから出ていった。

(....やばかった。)

斎藤が何をしようとしたかわかっていたけれど、恥ずかしくてごまかしてしまった。
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