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バカな男に私は夢中
第5章 心惹

「あ..百合ちゃん..俺....」

私はそのまま呆然と壁にもたれ立ち尽くした。

「....」

流れる涙を拭おうと伸ばされた手を払いのける。

「..っ..」

「私にさわらないで。」

「百..」

「満足した?強引にキスして。..私は他の女とは違う。そんなに気楽に誰とでも、なんて男の相手なんてしてられないし、時間もないの。」

「....」

斎藤はうつむいていた。

「..せっかく..心が開ける人ができたと思ったのに。」

私がいうと、パッと顔をあげた。

「ごめ..百合ちゃん....」

私は聞きたくなかった。

(今更もういらない。)

しっかりと斎藤の目を見て私はいった。

「メガネもいらない。もう絶対に関わらないでください。私はあなたが大嫌いです。」

お願いします、と頭を下げ、私は落ちていた鞄を拾い、肩にかけ駅に向かった。

斎藤は追いかけてこなかった。

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