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バカな男に私は夢中
第5章 心惹
昔を思い返していると、駅について電車を降りた。

しかし顔を上げると目の前に斎藤がいた。

「....」

私は無言で前を通り過ぎようとした。

その時

「ごめん。」

と謝られ、私は立ち止まり、ゆっくり振り返った。

「....」

「ごめん..」

まっすぐ私を見て謝まる斎藤から、目をそらす。

「傷つけて、ごめん。」

「..関わらないでって言ったよね?」

ようやく出た言葉にぎゅっと握りしめる手を見てため息をついた。

「私さっきまで最高に良い気分だったの。今は最高に最悪。」

「俺、百合ちゃん傷つけたし、関わるなって言われて我慢したけど..」

「じゃあ予備校終わるまで続けてちょうだい。」

私は斎藤を遮って、くるっと体を翻してホームから出ようとした。

すると

「でも我慢できへんかった!!」

と大きな声で彼が叫んだ。

その声にビクッとなり、思わず振り返った。

「な、なにを..そんな大きな声で..」
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