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こころから
第21章 久美子10
 気まずいな……

 照れるのは悔しいけど、
普通の顔でいられる自信はない。
何事もなかったように振る舞うのは無理だし、
何事もなかったような顔をされるのは怖い。
やっぱり顔を合わせるのは難しい。
いっそのこと、明るくなる前に先に帰っちゃうか。

 そんなことを考えていて油断していた。
そういえば坂井くんの寝息が聞こえないってことに、
意識が向いていなかった。
迂闊だった。

 ぱっと布団がめくられて、まぶしさに目が眩んだ。
布団にもぐりこんで目を閉じていたので、
電気がつけられていると気づいてなかった。
目の前は真っ白で、まぶしくて目が開けられない隙をつかれて、
私は両方の手首を押さえつけられていた。
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