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こころから
第28章 直人14

 ふたりきり以外のときは、
今までの呼び方を厳守。
会社では必要以上に目を合わさない。
不自然にならないように距離感に気を付ける。
他にも、ふたりの関係がバレないように、
ぼくは最新の注意を払った。

 本音は、牧原家から久美子さんを奪いたい。

 でもそれは、どう考えても現実的ではない。
それをしようとすると、ぼくたちは全てを失ってしまうことになる。
自分が不幸になるのは自業自得と諦められるが、
久美子さんはだめだ。
彼女が不幸になることなど、万にひとつもあってはならない。
もしそんなことになったら耐えられない。
そうなるくらいなら、ぼくひとりが死ねばいいとさえ思う。
現状を維持することに細心し、これ以上を望んではいけない。

 頭ではわかっているのだが……
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