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こころから
第42章 直人21
返事がなかった。
明かりがついているのに誰もいない。
中まで進み、背後でかちゃっと音がしたけど、
気づかないふりをしてあげる。
「わっ」
後ろから両肩を叩かれて、ぼくは驚いた顔をして振り返る。
トイレに隠れていたらしい久美子さんの、無邪気な笑顔。
後ろで束ねられていた髪はすでにほどかれ、
肩までの長さで自然に流れている。
「ただいま」
改めて言い、久美子さんを抱き締める。
一日仕事をしていたはずなのに、
久美子さんはすごくいい匂いがする。