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こころから
第53章 久美子27
 静かだ。
朝、夫がカーテンを開けていったので、
窓からきれいな青空が見えている。
外で遊んでいる近所の子どもたちの笑い声が、かすかに聞こえてくる。
ぼんやりと眺めていた雲の輪郭が滲みはじめて、
私はまた涙が流れ出したことを知る。

 ノックの音が聞こえたけど、私は反応できない。

「久美子、入るよ」

 夫の声。
ドアが開けられると、なつかしい香水の匂いがした。

「さおりさん、きてくれたよ」

 夫が言い、それから小さな声で、
よろしくお願いします、と言ったのが聞こえた。
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