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こころから
第53章 久美子27
「無理に立ち直ろうって思わなくていい。時間に任せなさい」

 投げられたそれは、思わず出した私の手のなかにすぽんと入った。
飴玉だった。
黄色くて丸いパイン飴。

「それでも死にたい気持ちが消えなかったらしょうがないわ。
私は止めない。
でも葬式で、ばかだなって嘲笑うからそのつもりでね」

 さおりが飴をくれたことには、たぶん何の意味もない。
無意識の可能性すらある。
何これ、って聞いたら、何それって答えそう。
さおりってそういう女だ。

「死にたくなくなったら、あとは旦那さんに頼りなさい」

「無理よ。ひどい裏切りしたんだもの。
ほんとうなら、ここにはいさせてもらえないのに」

 それなのに夫は、ひとつしかないベッドを私に使わせ、
自分はリビングで寝ている。
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