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こころから
第5章 久美子2
 部屋着に着替えて、ワンピースはハンガーに掛けて壁に吊るしておいた。
夫はゴルフに行っていて、たぶん帰りは遅い。
ひとり分の夕食をつくるのがめんどくさくて、冷凍うどんで簡単に済ませた。
仕事の日だと時間がなくてどうしても行き届かないところの掃除をする。
雑巾をかたく絞って拭き掃除をする。

 そういえば、と靴箱の中を全部出して棚を拭きながら思い出す。
美香が付き合っているらしい男の子が、知った顔だったのには驚いた。
しかも私の部下だ。
中途採用で入ってきた子で、今のところ一番経験が浅いけど、
真面目だし勉強熱心だし、仕事の飲み込みも早いので、
同じ年の子たちにすぐに追いつくだろう。
年は二十六歳だ。
誕生日が正孝と近いなと思ったのでよく覚えている。
美香との年齢差もちょうどいいくらいか。

 正孝はうちの長男で、
高校卒業大学入学のタイミングでひとり暮らしをはじめた。
盆と正月に帰ってくる以外は、電話すらめったにしてこない。
こっちから電話してもあからさまにうざがっている声を出すので、
なかなか電話しにくい。
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