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こころから
第6章 直人3
 気付けばまた牧原部長を盗み見している。
慌てて目を逸らす。
気合いを入れ直した直後でこの調子だった。

「坂井くん、今ちょっといい?」

 牧原部長からお呼びがかかったのは十五時少し前だった。
眠気はピークに達しており、
ちょくちょく意識が飛んでいたのが、一気に覚醒した。
牧原部長のそばに行けるというだけで心浮き立った。

「これ、お願いね」

 書類を受け取るとき、
不自然にならないように注意しながら牧原部長の手に触れた。
ぼくはまるで中学生のようにどきどきした。
今まであまり気にしていなかったが、
牧原部長は花を連想させるような、さわやかに甘い匂いがしていた。
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