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こころから
第10章 直人5

 帰宅してコンビニの弁当で晩御飯を済ませ、
しばらくさぼっていた部屋掃除をしているうちに雨が降り出したようだ。
昼間、陽当たりのいいところだと暑く感じるほどだが、夜はまだ寒い。
風邪をひきたくないので、部屋着の上からフリースのジャケットを羽織った。

 どのチャンネルに合わせても、テレビはつまらないので消した。
静かになっても、両隣、上下階の生活音はほとんど聞こえない。
家賃のわりに防音はしっかりしているのがありがたい。
ひとり暮らしを始めて五年。
ひとりでいることが平気なタイプだったはずが、
最近では寂しいと感じることが多い。
例えばここに、牧原部長がいてくれたらどんなにいいだろう。
髪をほどき、ソファーで、リラックスした表情でテレビを見ている。
彼女の隣に座ると、当たり前のようにぼくにもたれかかってくる。
CMになると顔をこっちに向け、キスをねだってくる。
自然と指と指が絡まる、
そんなことを想像している。
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