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こころから
第11章 久美子5
 久美子さんと呼ぶ声が聞こえる。
夫の声ではない。
でも聞き覚えのある声。
最近一番耳に馴染んでいる声。
不思議と安心する。
もたれかかりたくなるような安心感。

 背中に重みを感じた。
温かい。
後ろから抱きしめられているのだと気づいた。
久美子さん、と耳元で囁かれる。
首筋にかかる吐息。
私はそのひとに、真っ白い気持ちですっかりと体を預けていた。

 夫がベッドから出ていく気配を感じて、私は覚醒した。
すっかりと明るくなっている。
起き上がろうとして、全身が甘く痺れていることに気づき、
夢を見ていたことを思い出した。
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