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エンドレスサマー
第1章 許されないこと
私は五十で、妻は三十一。一年後私は五十一になり、妻は三十二なる。永遠に私と妻の間にある十九という数字が縮まることはない。何をばかなことを言っているのかと思われる方もいらっしゃると思うが、私はこの十九と言う数字が憎い。
私は十六年前まで東北の小さな町の中学で数学を教えていた。妻の美香とは、美香が中学三年生の時に出会った(正確に言えば教室で会った、ということになるだろう)。
教師がこんなことを言ってはいけないが、ショートヘアの美香は美人でもなければ、アイドルになるような要素はどこを探してもなかった。ただ一つ、美香は器械体操をしていたので他の女子生徒よりスタイルが良かったかもしれない(教師と言えども男である、見るべきところはしっかり見ている。※教師ではなく男の目で)。
私と美香は、美香が地元の高校に入学した五月の連休に旅行に出かけ、いわゆる男と女の関係を持った。そういう関係をどうにかして隠していこうと、私と美香は互いの行動に十分注意していたが、夏休みに入る頃噂が出始め、その噂はあっという間に小さな町に広まった。私は学校を辞め、美香は学校を自主退学した。生徒に手を出した男だけが罪を追えばいいのだが、世間と言うものはそんなに甘いものではない。
もはや私と妻はその町に住むことはできない。二人で町を出、海を渡って北海道に向かった。向かった北海道で私と妻は婚姻届けを出したのだが、その時担当した五十代の男が、じろりと私と妻を見た目を今でも忘れることができない。法は許しても世間は許さないぞ、という脅しを含んだ目。十九と言う年齢の差を嫌悪する目。婚姻を決して祝福しない目。
アルバイトで働き始めた地元のスーパーであったが、働き始めて十年後に札幌近郊の店の店長になることができた。
妻は二十歳で妊娠して、私と妻の間に女の子が生まれた。
妻は私にこう言った。「十代で妊娠したくない」と。十九年上の夫と十代での妊娠。後者の理由で、また世間からの好奇な目には耐えられない、と妻から打ち明けられたのだ。
もちろん私に反対する理由などない。私は妻の意志に従った。
今でも私と妻の年齢差を快く思わない目がないわけでもないが、そういう目にはだいぶ慣れてきたし、人間の生き方も多様化しているのだろう、私たちに厳しかった目もだいぶ柔らかくなってきたように思う。ありがたいことに。
私は十六年前まで東北の小さな町の中学で数学を教えていた。妻の美香とは、美香が中学三年生の時に出会った(正確に言えば教室で会った、ということになるだろう)。
教師がこんなことを言ってはいけないが、ショートヘアの美香は美人でもなければ、アイドルになるような要素はどこを探してもなかった。ただ一つ、美香は器械体操をしていたので他の女子生徒よりスタイルが良かったかもしれない(教師と言えども男である、見るべきところはしっかり見ている。※教師ではなく男の目で)。
私と美香は、美香が地元の高校に入学した五月の連休に旅行に出かけ、いわゆる男と女の関係を持った。そういう関係をどうにかして隠していこうと、私と美香は互いの行動に十分注意していたが、夏休みに入る頃噂が出始め、その噂はあっという間に小さな町に広まった。私は学校を辞め、美香は学校を自主退学した。生徒に手を出した男だけが罪を追えばいいのだが、世間と言うものはそんなに甘いものではない。
もはや私と妻はその町に住むことはできない。二人で町を出、海を渡って北海道に向かった。向かった北海道で私と妻は婚姻届けを出したのだが、その時担当した五十代の男が、じろりと私と妻を見た目を今でも忘れることができない。法は許しても世間は許さないぞ、という脅しを含んだ目。十九と言う年齢の差を嫌悪する目。婚姻を決して祝福しない目。
アルバイトで働き始めた地元のスーパーであったが、働き始めて十年後に札幌近郊の店の店長になることができた。
妻は二十歳で妊娠して、私と妻の間に女の子が生まれた。
妻は私にこう言った。「十代で妊娠したくない」と。十九年上の夫と十代での妊娠。後者の理由で、また世間からの好奇な目には耐えられない、と妻から打ち明けられたのだ。
もちろん私に反対する理由などない。私は妻の意志に従った。
今でも私と妻の年齢差を快く思わない目がないわけでもないが、そういう目にはだいぶ慣れてきたし、人間の生き方も多様化しているのだろう、私たちに厳しかった目もだいぶ柔らかくなってきたように思う。ありがたいことに。