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エンドレスサマー
第12章 エンドレスサマー
「先生、北海道でサーフィンなんてできるの?」
「美香」
「何?」
「会社を辞めたらハワイに行こう。移住するんだ」
「ハワイ? ってあのハワイ?」
「そう、あのハワイだ」
「一年中温かいところよね?」
「温かいし暑いだろうな」
「そこで暮らすの?」
「そう、美香と美緒と、それからこれから生まれてくる子供と僕でね」
「何だか素敵ね」
「美香、朝起きたら一緒にサーフィンをしよう。食事をして子供たちを学校に送る。それが終わったらまたサーフィンだ。午後は昼食と買い物に出かけてるんだ。昼食はお気に入りの店で食べる。できれば食後のコーヒーがうまい店がいいかな。ショッピングは僕じゃなくて美香が選んだものを買う。そして荷物は僕が持つ。それから子供たちを学校に迎えに行って、家に帰ったら夕食を僕と美香で作る。夕食は夕陽を見ながらみんなで食べる。子どもたちが寝たら夜の海を見る」
「夜の海なんて真っ暗で見えないでしょ」
「話を遮るなよ。夜の海だって見えるさ、僕と美香にはね。そして」
「そして……ふふふ」
「ベッドで愛し合う。どうだ? 悪くないだろ」
「ふふふ、本当に素敵」
「もっと素敵なことがある」
「何それ?」
「エンドレスサマー」
「エンドレスサマー?」
「そうエンドレスサマー」
「夏が終わらないとか、そういう意味?」
「そう。つまり?」
「つまり……わかったわ、永遠?」
「その通りだ。美香、僕は世界が壊れて宇宙が無くなっても、君と美緒と、そしてこれから生まれて来てくれる子供を絶対に離さない。命をかけて君と美緒と生まれてくる子供を守る。誓うよ」
「ありがとう」
 私の胸に冷たいものが落ちた。妻が泣いていた。
「美香、愛している」
「私も、先生を愛してる」
「ああ、早く会社を上場させてハワイに行くぞ。そしてサーフィンだ」
「先生、私の方が上達速いかもよ」
「間違いなく僕より早いだろうな」
「悔しい?」
「ああ悔しい」
「本当?」
「本当さ」
「先生の悔しがる顔早くみたいな」
「負けないぞ」
「私の勝ち決定!」
「冗談じゃない、僕の勝ちだ」
 僕は妻を強く抱きしめた。
「エンドレスサマーが待ち遠しいわ」
「僕も」
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