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エンドレスサマー
第12章 エンドレスサマー
憲法二十四条では「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」と書かれている。ところが、これは成人について定められたものであり、未成年については両性の合意だけでは結婚することはできない。
※二千二十二年四月一日より法律の改正により未成年の婚姻は認められておりません。
美香が十六になるのを待って婚姻届を出そうと思っても、その際は親権者の合意が必要となる。
予想通り美香の両親は私と美香の婚姻を認めてはくれなかった。と言うより無視され続けた。電話には出てもらえず、手紙を出してもその手紙は読んでもらえずそのまま帰って来た。その状況を知った私の唯一の友、小野正二が私と美香のために美香の両親に会ってくれた。
小野との出会いは私が大学一年で、小野も同じ大学の一年生のときだった。場所は大学の学食。
「美味いか?」
私が声の方に目をやると、トレーを捧げ持った小野と目が合った。
「美味いも何も、焼きそばは焼きそばの味しかしない」
「ははは。お前うまいこと言うな」
「ダジャレか?」
「ははは。物理学科一年の小野だ」
「応用数学一年の西東だ」
「ここいいか?」
「いいも悪いも、そこは僕が所有しているわけじゃない。好きにしろ」
「西東、君は友達少ないだろ」
「その言葉そのままお前に返してやるよ」
「ははは」
学科は違ったが、小野とは馬が合った。私も小野も大学に残り研究の道に進むはずであったが、私は大学を追い出された。
小野も四十を前にして他の大学に移った。その時は准教授であったが、今は准が取れて教授になっている。
どんな手を使って小野が美香の両親に会えたのか、どんな風にして美香の両親を説得したのかはわからない。小野は、私と美香が婚姻するのに必要な大量の書類を抱えて北海道にやって来た。式を挙げることはできなかった。小野と小野の細君だけが、私と美香の門出を祝ってくれた。
婚姻届けを出すとき、役所の男は冷たい目で私と美香を見て、提出書類に間違いがないか、たっぷり時間をかけて目を通していた。「おめでとうございます」という言葉がなかったことを今でも覚えている。
その小野から電話があった。母校に戻ることができる。北海道キャンパスで物理を教えるという連絡だった。
※二千二十二年四月一日より法律の改正により未成年の婚姻は認められておりません。
美香が十六になるのを待って婚姻届を出そうと思っても、その際は親権者の合意が必要となる。
予想通り美香の両親は私と美香の婚姻を認めてはくれなかった。と言うより無視され続けた。電話には出てもらえず、手紙を出してもその手紙は読んでもらえずそのまま帰って来た。その状況を知った私の唯一の友、小野正二が私と美香のために美香の両親に会ってくれた。
小野との出会いは私が大学一年で、小野も同じ大学の一年生のときだった。場所は大学の学食。
「美味いか?」
私が声の方に目をやると、トレーを捧げ持った小野と目が合った。
「美味いも何も、焼きそばは焼きそばの味しかしない」
「ははは。お前うまいこと言うな」
「ダジャレか?」
「ははは。物理学科一年の小野だ」
「応用数学一年の西東だ」
「ここいいか?」
「いいも悪いも、そこは僕が所有しているわけじゃない。好きにしろ」
「西東、君は友達少ないだろ」
「その言葉そのままお前に返してやるよ」
「ははは」
学科は違ったが、小野とは馬が合った。私も小野も大学に残り研究の道に進むはずであったが、私は大学を追い出された。
小野も四十を前にして他の大学に移った。その時は准教授であったが、今は准が取れて教授になっている。
どんな手を使って小野が美香の両親に会えたのか、どんな風にして美香の両親を説得したのかはわからない。小野は、私と美香が婚姻するのに必要な大量の書類を抱えて北海道にやって来た。式を挙げることはできなかった。小野と小野の細君だけが、私と美香の門出を祝ってくれた。
婚姻届けを出すとき、役所の男は冷たい目で私と美香を見て、提出書類に間違いがないか、たっぷり時間をかけて目を通していた。「おめでとうございます」という言葉がなかったことを今でも覚えている。
その小野から電話があった。母校に戻ることができる。北海道キャンパスで物理を教えるという連絡だった。