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言葉に出来ない
第1章 突然の出会いは進展もなし〜亮平
俺は、東京近郊の大学病院で、
脳外科医をしている。


そう言うと、ちょっとハイソでカッコいい感じがするかもしれないけど、
忙しいだけで、
時間もないし、出会いもない。


いや。
出会いが全くない訳ではない。


周りにはたくさんの看護師や事務員の、
妙齢な女性が居る。


ここの病院の医師は、
研修医以外は比較的年齢層が高いから、
「若手」と言われてたりもする。

客観的にはそんなに若くはないけど、
ちょっと前までは、結構モテていた。


でも、なんかすっかり面倒になってしまって、
誰に対しても事務的かつ冷淡に話をするようになったら、
以前ほどモテなくなったような気がする。


どうしてそうなったかというと、
簡単な話で、
周りの女性がやたら『結婚』をチラつかせて、
にじり寄ってくるのにウンザリしたからだ。

チラつかせるくらいなら、
まだマシな方で、
あからさまにズカズカと来られると、
もう、逃げ出したくなってしまう。


なんていうか、もうちょっと控えめで、
ゆっくり、じっくり、
どんなヒトなのかお互いに知り合ってから考えたらどうかと思うし、
こっちが『医者』だから、
安定してるとか、収入が高いとでも思うのか、
なんなら、押し倒してコドモでも作って、
結婚まで持ち込もうとしてるような策士も居て、
ほとほと疲れてしまった。



これ、自意識過剰ってワケではなくて、
そういうことを立ち話してるのを聴いたこともあったし、
休憩室で実際、
あわや!ってこともあって、
参ってしまった。


据え膳?

いやいや。
そんなことで、
結婚はしたくない。



同僚や同級生たちから、
合コンや婚活パーティーに誘われることもあった。

でも、そっちの方が、病院の女性よりもっと肉食っていうかなんていうか、
結婚目的に向かってギラギラしてて苦手だし、
翌日に手術がある夜は基本、飲まないし、
普段も緊急手術や呼び出しが入るかもと思うと、
アルコールは飲まないようにしてるから、
余計にそういうギラギラ感を客観的に見ることになって、
うんざりしてしまって、
そういった席にも行かなくなってしまった。




何処かに大和撫子、居ないのかなとぼんやり思ったりしているだけだと、
確かに出会いはめっきりなくなっていた。



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