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言葉に出来ない
第1章 突然の出会いは進展もなし〜亮平
時々入る夜間の救急外来のシフト。
たいして忙しくない夜もあれば、
次から次へと患者さんが担ぎ込まれる夜もあった。
専門は脳外科だけど、
勿論、一通りのことは出来る。
研修医や若手を指導しながらっていうのも、
体育会気質の俺にとっては、嫌いじゃなかった。
その夜は、
交通事故に遭った比較的軽傷の患者さん、
いまだにそんなヤツ居るのかと思った急性アルコール中毒の男子学生、
そして、脳梗塞疑いの89歳の女性が救急車で運び込まれた。
3人目の女性が運び込まれたのは深夜1時過ぎで、
お手洗いに起きた時に倒れたようで、
頭も打っていたけど、左側に若干麻痺が見受けられて検査などもすることになった。
簡易的な検査結果を伝えようと、
外の待合室を覗くと、
小柄で髪を後ろに纏めた女性が震えながら座っていた。
「小川さんのご家族ですよね?
ちょっと中までお願いします」と声を掛けると、
ビクッとした表情で俺のことを見上げて、
ヨロヨロと立ち上がって、
足から崩れ落ちそうになった。
俺は慌てて支えようとすると、
「申し訳ありません…」と、
小さい声で囁いた。
「大丈夫ですか?
ここで説明しますか?
あ…でも、あっちの方がデータとか観れるから…」と言うと、
「大丈夫です」と俺を見上げて少し微笑もうとしたようだったけど、
大きい瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
ちょっと不謹慎だったけど、
その顔がなんていうか、
物凄く不安そうで、儚いほど頼りなくて、
抱き締めたいような衝動が湧き起こってしまった。
でも、そういうわけにはいかないし、
俺は自分の気持ちに困惑しながら、
顎を掻いた。
彼女は椅子に置いてあった小さなバッグを手に、
ゆっくりと俺の後ろについて、
救急外来の片隅のデスクまで来てくれた。
たいして忙しくない夜もあれば、
次から次へと患者さんが担ぎ込まれる夜もあった。
専門は脳外科だけど、
勿論、一通りのことは出来る。
研修医や若手を指導しながらっていうのも、
体育会気質の俺にとっては、嫌いじゃなかった。
その夜は、
交通事故に遭った比較的軽傷の患者さん、
いまだにそんなヤツ居るのかと思った急性アルコール中毒の男子学生、
そして、脳梗塞疑いの89歳の女性が救急車で運び込まれた。
3人目の女性が運び込まれたのは深夜1時過ぎで、
お手洗いに起きた時に倒れたようで、
頭も打っていたけど、左側に若干麻痺が見受けられて検査などもすることになった。
簡易的な検査結果を伝えようと、
外の待合室を覗くと、
小柄で髪を後ろに纏めた女性が震えながら座っていた。
「小川さんのご家族ですよね?
ちょっと中までお願いします」と声を掛けると、
ビクッとした表情で俺のことを見上げて、
ヨロヨロと立ち上がって、
足から崩れ落ちそうになった。
俺は慌てて支えようとすると、
「申し訳ありません…」と、
小さい声で囁いた。
「大丈夫ですか?
ここで説明しますか?
あ…でも、あっちの方がデータとか観れるから…」と言うと、
「大丈夫です」と俺を見上げて少し微笑もうとしたようだったけど、
大きい瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
ちょっと不謹慎だったけど、
その顔がなんていうか、
物凄く不安そうで、儚いほど頼りなくて、
抱き締めたいような衝動が湧き起こってしまった。
でも、そういうわけにはいかないし、
俺は自分の気持ちに困惑しながら、
顎を掻いた。
彼女は椅子に置いてあった小さなバッグを手に、
ゆっくりと俺の後ろについて、
救急外来の片隅のデスクまで来てくれた。