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あの海の果てまでも
第4章 新月の恋人たち 〜新たなる運命の扉〜
「…そう言えば、どうして今日はあんなに遅くなったの?」
うとうとと眠りに就こうとしている暁に、大紋は思い出したように尋ねた。
…あのあと、礼也の手紙騒動ですっかり聞くのを忘れてしまったのだ。
「…ああ。
実は昼間、ちょっと面白いお店に行ったんです」
微睡みかけていた暁が寝台の中、少しぼんやりしたような口調で答えた。
「面白い店?」
「…ええ。
リージェントパークの外れ…多国籍の人々や店が集まる不思議な街があって…。
…そこに春風茶房というアンティークのカフェがあったんです。
…で、その店主さんが中国人と日本人との混血の方で、びっくりするような綺麗な男性で…」
「へえ」
「…色々お話しているうちに僕、そこのお店で働くことになって…」
「…へえ…」
と頷きかけて
「え⁈働く⁈暁が⁈」
ぎょっとする。
「…ええ…」
「ちょっと、急すぎないか?
その店、ちゃんとした店なの?」
慌てる大紋に、ふんわりと柔らかな色香を含んだ瞳が微笑う。
「…大丈夫ですよ…」
…やがて…
「…すみません…もう…眠くて…また起きたら…詳しく…おはなし…しま…」
小さな声が途切れる。
「暁?」
…もう夢の中に入ってしまったようだ。
静かに寝息を立てる暁に大紋は微苦笑し、その白く清らかな額に口唇を落とす。
「…おやすみ、暁…」
そっと寝台を降り、ローブを纏う。
窓辺に近づき、カーテンを手繰る。
ひんやりとした冷気が漂う。
…空には新月の月が輝いていた。
何かが少しずつ変わりそうな…そんな予感が大紋の身体を静かに包み込む。
…けれど…
「…いいさ。
どんなことが起ころうと、俺の愛は変わらない」
口に出して、宣言する。
そうして、寝台を振り返る。
…新月に照らされた愛おしくも美しい恋人は、静かに眠りに就いたままだ…。
うとうとと眠りに就こうとしている暁に、大紋は思い出したように尋ねた。
…あのあと、礼也の手紙騒動ですっかり聞くのを忘れてしまったのだ。
「…ああ。
実は昼間、ちょっと面白いお店に行ったんです」
微睡みかけていた暁が寝台の中、少しぼんやりしたような口調で答えた。
「面白い店?」
「…ええ。
リージェントパークの外れ…多国籍の人々や店が集まる不思議な街があって…。
…そこに春風茶房というアンティークのカフェがあったんです。
…で、その店主さんが中国人と日本人との混血の方で、びっくりするような綺麗な男性で…」
「へえ」
「…色々お話しているうちに僕、そこのお店で働くことになって…」
「…へえ…」
と頷きかけて
「え⁈働く⁈暁が⁈」
ぎょっとする。
「…ええ…」
「ちょっと、急すぎないか?
その店、ちゃんとした店なの?」
慌てる大紋に、ふんわりと柔らかな色香を含んだ瞳が微笑う。
「…大丈夫ですよ…」
…やがて…
「…すみません…もう…眠くて…また起きたら…詳しく…おはなし…しま…」
小さな声が途切れる。
「暁?」
…もう夢の中に入ってしまったようだ。
静かに寝息を立てる暁に大紋は微苦笑し、その白く清らかな額に口唇を落とす。
「…おやすみ、暁…」
そっと寝台を降り、ローブを纏う。
窓辺に近づき、カーテンを手繰る。
ひんやりとした冷気が漂う。
…空には新月の月が輝いていた。
何かが少しずつ変わりそうな…そんな予感が大紋の身体を静かに包み込む。
…けれど…
「…いいさ。
どんなことが起ころうと、俺の愛は変わらない」
口に出して、宣言する。
そうして、寝台を振り返る。
…新月に照らされた愛おしくも美しい恋人は、静かに眠りに就いたままだ…。