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フランソワとの想い出
第1章 料金は肉体で
 窓からは街の夜景が見えた。
 フランソワとぼくは、バスローブを着てワインを飲みながら黙ってそれを見ていた。
 ここは彼の部屋、趣味のいい音楽が流れている。
 外からの風に金髪をなびかせ、西洋画の美少年のようなフランソワが碧く澄んだ瞳をこちらに向けて話しかける。
「あんさん、ここへ来るの初めてでんな」
 美貌に似合わぬコテコテの関西弁。
 彼は幼少の頃から大阪で育ったのだという。
「うん、今日はすまなかったね」
 終電を逃したぼくを、フランソワは快く自室に招いてくれたのだ。
「あんさんとわいの間柄や、そんなんかめしまへん。ただなあ」
「ただ?」
「宿泊料は体で払ろてもらいまっせ」
「ああ、洗い物でも掃除でもなんでもするよ」
「いや、そやのうて……」
 そう言ってから、ワインを口に含んだフランソワはいきなりそれを口移しで強引にぼくの唇に注ぎ込む。
「体で払うっちゅうのはこういうこっちゃ」
「君、ゲイなのか?」
「実はわいは日本に来てから、大阪の商家の旦さんのお稚児さんしてましたんや」
 それで関西弁、それも年配の商人言葉を使うのか。納得。
「早よ、脱ぎなはれ」
 言いながら強引にぼくのバスローブをむしり取る。
「思ってた通り、スケベな体してまんな」
 ぼくの浅黒い体を見ながら舌なめずりをする。ゲイの人の好みは千差万別と言われるが、フランソワは東南アジアの子みたいなのがタイプなのかも知れない。
「今夜は、たっぷり楽しませてもらいまっせ」

 
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