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フランソワとの想い出
第3章 禁断の恋
 フランソワの口から、二人分の精液がぼくの口内に流れ込んで来る。
 吐き出したいのだが、両手で顔を押さえられて口を離せない。
 しかたないので、気が進まないながら飲み干した。
「愛のミルク二人分飲んだ気分はどないだ?」
 やっと、唇を離したフランソワが尋ねる。
「吐きそうな気分だ」
 答える息が生臭くでおぞましい。
「おかげで、ええ作品が撮れましたわ」
 カメラと三脚をかたづけながら彼が言う。
 ぼくは心の中で、もう二度と終電は逃すまいと誓った。

 もっとも、それ以後2回程終電を逃し、同じようにフランソワに宿泊料金を“体で払う”はめになったのだが……

 一度、彼が編集した動画を見せて貰ったことがある。
『ヨーロッパ王子とエジプト奴隷少年/禁断の恋』と、フランソワの愛撫と同じくらいテキトーなタイトルが出た後、延々と我々のベッドシーンが続く。
 さすがに映画監督志望だけあって、フランソワの白い体とぼくの黒い体の絡み合いはなかなかエロチックに編集されていた。彼の興ざめな関西弁の代わりにムーディーなBGMが流れている。
「辛抱たまらん」というフランソワの音声がカットされ「ジュテーム」とテロップが出るのには笑ってしまった。
 最後はあの悪夢のディープキスでフェイドアウト。
「こういう動画、結構需要がおまんねんで」
 確かにフランソワの常人離れした美貌の絡みは、その道の人にとっては宝物だろう。
 今も何処かの好事家の書斎に並んでいるかも知れない。
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