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誰も知らない君の顔
第1章 高嶺の華
「お久しぶりです」

「は、はい・・・お久しぶりですっ」

俯いたまま到着したエレベーターに乗り込むと慌てて目的の階のボタンを押すが、何ともコミカルな動きに思わず吹き出してしまった。

「相変わらずですね、結奈さんも」

「わ、笑わないで下さい!」

控え目で清楚な外見。性格も穏やかで、彼女を嫌う人間なんていやしない。

「平沢さん、少し痩せました?」

「え?」

「あまり無理なさらないで下さいね」

目的の階に到着すると、彼女は軽く会釈をして降りて行った。

一條結奈(いちじょう・ゆいな)。その名字の通り一條グループ会長の孫で社長の一人娘。
同じ年の彼女とは同僚で、新入式で知り合って軽い立ち話をする程度だが、そう滅多に会える人物ではない。
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