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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第10章 章間③
僕も教室の隅の方から椅子を引っ張り出して鞄からスケッチブックを取り出していく。

「藤沢くん…決まりました?……」

決まったかというのは文化祭の作品テーマだ。
声の主は森宮先輩だった。

「先輩…すみません…まだ…」

先輩は乱雑に置かれた机にお尻を預けるように立つ。
座った僕からはプリーツスカートから伸びる先輩の脚が目に入っていた。

「ほんとに大丈夫ですか?…そろそろ決めないと間に合いませんよ……」

顎に手を当て心配そうに僕を見下ろしている。
ちょっとどぎまぎしてしまう。

「ですよね…人物画にしようと思ってたんですけど、やっぱり風景画にしようかと考えています…」

「人物画…藤沢くんの人物画も観てみたいですね……私は午前中はなるべく顔を出そう思っていますから、何か相談事があればいつでもいらしてください……」

先輩はそう言うと自分が制作中のキャンバスへと戻っていった。
僕はパラパラとスケッチブックを捲った。

【観てみたいかぁ…人物画ならやっぱりモデルは結奈さんがいいなぁ…】

そんなことを思いながらも視線の先にいる先輩の横顔を見つめスケッチブックにラフ画の線を引いていた。

【やっぱり先輩も美人だよなぁ…】 

翌朝、ドアのノックの音に起こされた。
部屋の外から母の声が聞こえていた。
  
「陽翔…夏休みになったからっていつまで寝てるの?…」 

「はーい、起きるよ…起きたから…」

いよいよ今日は叔母のマンションに泊まりに行く。
ガバッとベッドから跳ね起きた。
母も今日から父の単身赴任先に向かう。

「私も出掛けるから早く食べてね……お昼前には出るから……陽翔は結奈のとこ何時に行くの?…」

「母さんと一緒に出るよ…戸締まりとかめんどくさいし…美術部に顔出してから向かうつもり…」

トーストをかじりながらそう答えた。

陽翔と姉が家を出る頃、私はようやく起きた。
夕べの女子会、ちょっと飲み過ぎた。
二日酔いとまではいかないまでも身体がだるかった。
陽翔が来るのは夕方の予定。
部屋は1週間かけて掃除してあるから問題ない。
昨夜着ていた服がソファに放り出してある暗いだ。

【もう少し…寝よ……】

ベッドの上で寝返りをうつと、もう微睡んでいた。
迂闊にもスマホのアラームをセットせずだった。
少し、もう15分…そのはずだったのに…。           
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