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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第13章 登校日
「もう…そんなに驚かなくてもいいじゃないですか……」

部長は膝を折って落ちたスケッチブックを拾おうとした。

「あ、そんな自分で…」

拾い上げられたページは以前なんとなく描いたスケッチだった。

【しまった…気づかれた?…】

部長はゆっくりと立ち上がり、暫しそのページを見つめていた。

「やっぱり人物画にするんですか?……」

そうしようと思っていた。
モデルは叔母にと願っていたが、そんな話はできてなどいない。

「…でも今からモデルも見つからないし…やっぱり風景画にしようかななんて…」

少し間が空いた。
まだスケッチブックは部長の手の中にある。

「私…中学の頃の藤沢くんの作品観たことあるんですよ……あれは風景画でしたね……」

「え…あ、ありがとうございます…」

きっとコンクールで入選した絵を言っているのだろう。

「風景画も素敵だなと思いましたが…藤沢くんの人物画も観てみたいと思います……相談にのると言ったでしょう……」

僕は明らかに緊張してしまっていた。

「で、でもやっぱり時間が…もう決めないと間に合わないので…」

「お盆明けに時間取れますか?…一度私のアトリエにいらっしゃいませんか……あ、アトリエと言っても自宅の一室に過ぎませんけどね……」

【僕が部長の家に…】

驚いた。
正直、他の一年生に比べると気にかけてもらっている自覚はあった。
だからと言って自宅に招かれるなんて思ってもいなかった。

「そんな自宅にお邪魔するだなんて…」

「私は次の文化祭で部活は引退なんです…その前に後輩の力になりたい…いけませんか?……」

そこまで言われて断る理由など見つけられなかった。

「僕のなんかの為に申し訳ないって思っただけで……じゃ、じゃあお言葉に甘えさせてもらっていいですか…」

叔母とのことがなければ舞い上がっていただろう。

【結奈さん…これは浮気じゃないからね…】

叔母に気持ちの上では受け入れられたわけじゃないのに、そんなことを思っていた。

「決まりですね…じゃあLINE交換しましょう……」

部長は嬉しそうに笑みを浮かべてスマホを差し出してきた。
僕はそのIDコードを自分のスマホで読み取っていった。

「詳しいことはまた連絡しますね……今日はこれで失礼しますから…楽しみにしています……」

「ぁ…こちらこそよろしくお願いします…」
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