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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第16章 アトリエ
「うーん…確かにこれは観られたくないですね……」

【どっちの意味ですか?…】

僕が観られたくないって思ってること?
それとも、他人に観せられないってこと?

緊張に逃げ出したくなる。

「藤沢くんはほとんど初めてって言ってましたものね……これはあなたが視た私ではないでしょう……」

【何を言ってるんですか?…視たままを描いてこれなんですよ…】

何を言えばいいのか解らなかった。

「あなたは私を風景だと思っているのですか?…私は生きた人間ですよ……」

「意味が解りません…そんなの僕はプロじゃないし…風景も人も僕には描き方の違いなんて解らないです…」

「服の下の線を引きましたか?……」

「え?……」

先輩は以前に描いた美術部員とは制服姿でも、ぜんぜん違う。
それは一目見れば明らかだった。
そこは意識して描いたつもりだった。
でも全く満足いく…筆入れ前のデッサンだというのに…
ぜんぜん別物になっていた。

先輩の言う意味はよく解らない。
きょとんと僕は先輩を見つめていた。

先輩は柔らかな笑顔で語りかけてくる。

「船の絵を描く時…船といっても大きな帆を張った帆船ですよ……藤沢くんならその帆をどう描きますか?……」

「帆船の…帆を……」

「解りますよね?……帆を支える支柱があるでしょ……風景画だって、うっそうと茂った森林…あなたは沢山の重なった木々を想いながら描きませんか?……」

【そうだ…確かにそうだ…】

「理解したみたいですね……私にだって視えない部分があるんですよ……そこに想いを馳せなかったら…それは本当にあなたが想う私ではないでしょう……」

理解はできた。
とても上手な説明で、腑に落ちた。
僕は目に前に立つ先輩を見つめた。
撫で肩の薄いブラウスの下の骨格。
膨らみを持ち上げる薄い生地の下にはもう一枚ある。
更にその下を注視するようにみつめると…股間が熱くなるのを感じた。

【だめだ…違うだろ…今はそんなことじゃないんだ…】

自分に言い聞かせながら、僕は視線を下へとずらしていく。
ここに臍があるのか?
スカートの下の輪郭…プリーツスカートは微かに裾が拡がっている。
腰から下の流線形はどんなだ?
どれが正解なんだ?
僕は凝視するあまり眉間に皺を作っていた。

「そんなに視ても解らないでしょう?……」

先輩は恥ずかしそうに頬を染めていた。
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