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夜来香 ~若叔母と甥の危険な関係~
第16章 アトリエ
美人でスタイルもいいのは解っている。
その先輩がポージングする姿になんでここまでドキマギしているのか…。
アトリエは夏の日中にしてはどこか仄暗い印象だった。
先輩が椅子を使って立った場所は…
天井近くの壁際にある天窓から南向きの陽の光が斜めに射し込んでいた。
先輩の身体を斜めに光が照らしている。
胸元からヒップにかけて斜めに…左足のローファーに掛かるように…陰陽のコントラストを見事なまでに創り上げていた。
もうその空間そのものが絵画に思えた。
「こんな感じでどうですか?……」
「か、完璧です……」
「それは良かったですね……」
僕は新しいページに線を入れていった。
スケッチブックを滑る…短い、長い線を引く音を細かく鳴らしていく。
先ずは身体のパーツを楕円で区切る。
次いで大まかな輪郭……
仮の線に具体的な輪郭を重ね込んでいく…。
長い時間線を引いていく。
指先で暈し、消しゴムで不必要となった線を消して…
【はぁ…だめだ…素材がいいのに腕がついていかない…】
緊張していた。
風景画とは全く違う。
いったいどれほどの時間を費やしているのか、解らなくなっていく。
アトリエにエアコンは効いていた。
先輩は涼しい顔をして遠くを見つめている。
それなのに僕は凄く汗をかいていた。
顎を汗が伝う。
トートバッグに入っていたタオルを取り出して汗を拭いて、深く息を吐いた。
「描けたんですか?……」
先輩の言葉がまた時間の感覚を麻痺させる。
かなりの時間を費やしたはずだ。
鋭角だった陽の光は先輩を鈍角に照らしている。
「いえ、まだです…すみません…」
「大丈夫です…私も集中すると時間を忘れてしまいますから……」
僕は最初から描き直そうとページを捲った。
「拝見しても構いませんか?……」
【嫌だった…こんなの部長じゃない…】
また誰ですか?…と聞かれてしまうかもしれない。
「やっぱり…難しいですね…僕には…」
自信なさげな声を出した。
身動ぎひとつしなかった先輩が動いた。
ローファーの音が近づいてくる。
「大丈夫です…藤沢くんに私がどう映っているのか…観せてください……」
椅子に座ったまま、僕はスケッチブックを握りしめた。
先輩はページの隙間に指先を入れてくる。
僕は手から力を抜き、捲られるページを黙って見つめた。
やっぱり…酷いデキだと思った。
その先輩がポージングする姿になんでここまでドキマギしているのか…。
アトリエは夏の日中にしてはどこか仄暗い印象だった。
先輩が椅子を使って立った場所は…
天井近くの壁際にある天窓から南向きの陽の光が斜めに射し込んでいた。
先輩の身体を斜めに光が照らしている。
胸元からヒップにかけて斜めに…左足のローファーに掛かるように…陰陽のコントラストを見事なまでに創り上げていた。
もうその空間そのものが絵画に思えた。
「こんな感じでどうですか?……」
「か、完璧です……」
「それは良かったですね……」
僕は新しいページに線を入れていった。
スケッチブックを滑る…短い、長い線を引く音を細かく鳴らしていく。
先ずは身体のパーツを楕円で区切る。
次いで大まかな輪郭……
仮の線に具体的な輪郭を重ね込んでいく…。
長い時間線を引いていく。
指先で暈し、消しゴムで不必要となった線を消して…
【はぁ…だめだ…素材がいいのに腕がついていかない…】
緊張していた。
風景画とは全く違う。
いったいどれほどの時間を費やしているのか、解らなくなっていく。
アトリエにエアコンは効いていた。
先輩は涼しい顔をして遠くを見つめている。
それなのに僕は凄く汗をかいていた。
顎を汗が伝う。
トートバッグに入っていたタオルを取り出して汗を拭いて、深く息を吐いた。
「描けたんですか?……」
先輩の言葉がまた時間の感覚を麻痺させる。
かなりの時間を費やしたはずだ。
鋭角だった陽の光は先輩を鈍角に照らしている。
「いえ、まだです…すみません…」
「大丈夫です…私も集中すると時間を忘れてしまいますから……」
僕は最初から描き直そうとページを捲った。
「拝見しても構いませんか?……」
【嫌だった…こんなの部長じゃない…】
また誰ですか?…と聞かれてしまうかもしれない。
「やっぱり…難しいですね…僕には…」
自信なさげな声を出した。
身動ぎひとつしなかった先輩が動いた。
ローファーの音が近づいてくる。
「大丈夫です…藤沢くんに私がどう映っているのか…観せてください……」
椅子に座ったまま、僕はスケッチブックを握りしめた。
先輩はページの隙間に指先を入れてくる。
僕は手から力を抜き、捲られるページを黙って見つめた。
やっぱり…酷いデキだと思った。