この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
代車
第5章 綾乃
午後に入り 前田の席の前に橋本智美が立っていた
前田の叱責の声が響き 橋本は頭を下げ
ハンカチで涙を拭いている
渡部は席の後を通る 宮崎綾乃にそっと聞いた
「何か注文数量間違えて 工場からさっき 問い合わせが有って解った見たい」
宮崎が渡部に顔を寄せて囁く
宮崎は今年36歳、30歳の時結婚し そのまま退職せず仕事を続け
渡部は入社以来、ミスのたびに宮崎にかばってもらい
前田の盾の様に 渡部に接してくれていた
渡部の仕事ぶりに一番驚いているのは
宮崎かも知れなかった
渡部はパソコンを開くと画面を見つめ
幾つかチェックして 電話をかけ始めた
相手が出る、渡部が名乗ると同期の阿部だった
「今回迷惑掛けたな あの部品代替えは無いの?」
聞くと、幾つかの工場に確認したが どこにも無く
国分機械が扱っている事は解っているが
二階堂グループの子会社なので
無理だろうと話す
「この部品今日のは 間に合うが明日からは動かなくなる
次が次が入った時 従業員に無理な残業が発生するよ」
自嘲を込めた笑い声をあげ 電話が切られた
渡部は少し考え メールを打ち込み送信した