この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
代車
第5章 綾乃
水曜日
渡部は 百貨店に居た 紳士服売り場に入ると斎藤が近寄ってくる
「何着かお願いしたいからよろしく」と渡部が言うと
此方へと案内され 渡部の全身を斎藤は図り始め
「以前より多少 大きくなってますね」 呟きながら 生地を持ってきて
斎藤と生地を見ながら選んでいると 後ろで靴売り場の相沢さん今月で
退職だってと 社員が話すのが聞こえ
渡部は幾つかの生地を選び注文すると 靴売り場へ向かった
相沢が寄ってくる 新しい靴有るかな? 相沢は微笑んで
奥に入ると 3足の箱を抱えて来た 渡部はスツールに腰かけ
靴に足を入れ 履き心地を確かめていると
「この間ありがとうございました」 相沢が頭を下げた
渡部と別れ家に帰ったら 気持ちが落ち着き 再出発の意欲が出た
一度 家に帰り やり直そうと思ったと話して来た
渡部は何も言わず 相沢を見つめ頷いた
売り場を出るとき 相沢が深々と頭を下げ
渡部を見送っていた
午後出社し 席に着くと渡部は 仕事に没頭していた
目の前の電話が鳴り 受話器を取ると英語で話始めてきた
渡部が英語で応答しているのを驚いた顔で 皆が見て
電話はニューヨークの銀行の頭取が 来週こちらに来ることと
支払いの入金の件だと話してきた