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そんなの聞いてない!!
第1章 ウワサ


「俺、性欲ないんだ。だから付き合えません。ごめんなさい。それじゃ――」


告白してくれた同僚の女に向かって、お決まりの断り文句を告げた福浜千紘がその場を立ち去ろうとすると、それを阻むように女が抱きついてきた。


――は?


福浜が驚きながら女を見ると、
「ねぇ……その、性欲ないっていうの本当なのぉ?」
遠慮なく胸を押し付けて上目遣いで見つめ返してくる。

名前は確か、鈴木か佐藤だったか。
同僚なのにはっきりと覚えていないのは、福浜が彼女に対して微塵も興味がないからだ。


「ああ、本当だよ。ウワサに聞いてるかもしれないけど俺、EDなんだよね」

「いーでぃー?」
女がおおげさに首をかしげる。


――ぜってぇ、わかってんだろ……。


「うん。とりあえず、離れてくれる?」


福浜が女の肩を掴んで体を離すと、えーなんでぇ? と女は猫なで声を出す。


「ED、つまり勃起不全なの俺。エッチなことも一切できないけど、それでも付き合える? 鈴木さん」


こう言えば、大抵の相手は諦めてくれた。
学生ならまだしも、社会人での交際でプラトニックな関係なんてありえないからだ。

何人か実際に交際してみたこともあるが、キスされようが大事なムスコをいじられようが、興味がない相手には頑として勃つことはなかった。


「え~、鈴木じゃなくてぇ、田中なんですけどぉ~!」


どうやら鈴木も佐藤も違ったらしい。
そう言われたら、田中っぽい顔をしている。
福浜が内心で納得してると田中が再び体をすり寄せてきた。


「できるかできないかは~……試してみないと、じゃない?」


田中がウフフと笑いながら、福浜の股間をまさぐり始める。


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